ほとんどの尿路結石(医学用語では「urolithiasis(尿路結石症)」)は尿中のミネラル成分と水分のバランスが変化することで生じます。結石は尿中のミネラルを含む塩からなり、それらが集積して小さい塊になったものです。最初は米粒大より大きくありませんが、径が数センチの大きさになることがあり、場合によっては腎全体に広がることもあります。
結石は腎臓や尿管にとどまることもあれば、尿路から体外へ排出されることもあります。泌尿器は尿を生成して排出するために働く器官です。尿路は腎臓、尿管(腎臓と膀胱をつなぐ管)、膀胱、および尿道からなり、この経路を通じて膀胱から体外へ尿が排出されます。結石の位置によって、腎結石、尿管結石、および膀胱結石と診断されます。結石は構成する塩分構成によって以下のように分類されます。
尿路結石の原因となる尿中ミネラルバランス変動を引き起こす主な要因は以下のとおりです。
1980年に初めて治療された体外衝撃波砕石術Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy(ESWL)は今日、腎結石や尿管結石に対する標準的な治療の選択肢になっています。衝撃波砕石術は外科手術を必要としないため、体に優しい結石の摘出方法です。ほとんどの結石はこの方法で有効に治療することができます。治療は体外から体内へ衝撃波を照射して行います。衝撃波は体の組織を通って結石の焦点に到達し結石を粉砕します。この治療が成功すると細かくなった砕石片は尿とともに自然に体外へ排出されます。
衝撃波は皮膚を通過して作用するため、外科手術のような侵襲的処置の必要はありません。ESWL治療は通常、激しい痛みは伴いません。しかし、もし患者様が痛みを感じるようであれば、担当医師が鎮痛薬を投与することも可能です。衝撃波砕石術は約30~60分で、外来治療も可能です。最新の装置を使用すると、尿路内のどの位置の結石でも、患者様が仰向けの状態で治療を受けることが可能です。超音波やX線画像診断を用いて衝撃波が結石の焦点に合うように衝撃波発生装置を調整します。これらの装置は処置中、処置後には治療の成否を確認する際にも使用します[11]。
結石の場所と大きさによっては1回の治療のみで高い成功率が得られるため、外来で治療を行うことが可能です。ESWLを受けた患者様の最大90%は結石が完全に除去され、1回のみの治療で済んだ症例の割合は70%を超えることが研究で報告されています[12, 13]。
一般的に大きな腎・尿管結石は外科的に摘出されます。通常、患者様を砕石位(仰向けに両足を開いた状態)に寝かせ、全身麻酔により内視鏡下で腎結石または尿管結石の摘出が行われます。内視鏡を使用し、尿道⇒膀胱⇒尿管へと結石に到達するまで細い器具を挿入します。内視鏡が結石に到達したところで、内視鏡下で破砕機またはレーザによって結石を粉砕します。破砕片は小型の鉗子かバスケットを使って摘出します。このような内視鏡的治療法は経尿道的尿管結石破砕術(TUL)と呼ばれ、通常、2日間の回復期間を経て退院となります[11]。
このような内視鏡下手術の終了時、尿流の閉塞を予防し、患者様へ負担がかからないようにするため、通常は全身麻酔下で尿管ステントを挿入します。このステントは1~2週間後に外来処置で抜去します[11]。
この手技はほとんどの場合、サンゴ状結石のような大きく複雑な尿路結石に対してのみ行われます。サンゴ状結石とは腎盂の大部分や腎杯の1つまたは複数を満たす結石をいいます。経皮的腎砕石術(PNL)では背部に人工的な開口部を作って腎結石を摘出します。実際には、側腹部から皮膚を通して腎臓を直接穿刺し、結石がある場所へ内視鏡を挿入します。この手術は一般に全身麻酔下で行われます。患者様を砕石位に寝かせ、尿管に対する手術準備を進めます。次に患者様の体位を変えてうつぶせにします。これで手術そのものを背部から行えるようになります。
超音波およびX線画像診断を用いた観察下で穿刺手技を実施します。太さが鉛筆程度の内視鏡を腎臓へ挿入したところで、超音波またはレーザで結石を粉砕してから砕石片を摘出します。手術を終えるにあたって、カテーテルを腎臓に挿入するか(側腹部から外部への尿路変更)、または尿管ステントを留置して(内部の尿路確保)、尿流の閉塞を予防します。
通常3~5日間の入院が必要です。経験豊富な外科医が手技を行えば一般に合併症発生率は低いとされています[11]。
腎結石は体外衝撃波砕石術(ESWL)か、TULやPNLなどの外科手術のいずれかで治療します。関係する医師会(例:ドイツ泌尿器科学会、欧州泌尿器科学会など)は最良の治療法を選択する方法について提言を行っています。このような医師会の提言はガイドラインの形で泌尿器科医に提供されています。いずれも医学的研究から得られた最新の科学的知見に基づくものです。2017年10月時点で、欧州泌尿器科学会(EAU)が発行する腎結石および尿路結石の治療に関するガイドライン[1]は以下のとおりです。
主な要因は結石の場所と大きさです(上図を参照)。これは診断によって最初に推定されます。図内右側のボックスには推奨される治療法を、望ましい順(1番、2番)か同等な選択肢として記載しています。例えば下部尿管(膀胱近くの尿管部)に8 mmの結石がある場合、EAU のガイドラインでは ESWLまたはTULによる治療を推奨しています。
経尿道的尿管結石破砕術(TUL)には通常全身麻酔や入院が必要になります。そのため、患者様にとってある程度のリスクが伴うおそれがありますが、現在も多くの泌尿器科医がこの治療法を選択しています。その理由でよくあげられるものは、1回の手術で完全かつ迅速に結石を摘出できるという点です。一方、体外衝撃波砕石術(ESWL)の欠点として1回の治療で破砕できなかった結石に対して、二次治療が必要なことが挙げられます。しかし、すでに述べたとおり、ESWLによる成功率は高く(ESWLが得意な結石を選択すれば最大90%を超える)、多くの症例は1回のみの治療で済みます。このような非侵襲的治療法にはいくつかの重要な利点もあります。衝撃波治療は非侵襲的治療である為、麻酔、感染、外科手術、入院に関連したリスクを伴わず、外来治療も可能です。二次治療としてESWLを実施された場合も、同様の観点からESWL治療の方が、侵襲的な経尿道的尿管結石破砕術(TUL)や経皮的腎砕石術(PNL)の手技より、患者様の負担は軽くなります[14, 15]。
泌尿器科医は、患者様の腎結石や尿路結石に対する適切な治療を判断する際に、さまざまなパラメータを考慮します。診断材料には、結石の場所、大きさに加え、結石の化学組成、既存状態、身体の解剖学的特性などが含まれます。
ESWLの非侵襲的治療には明確な利点があります。担当医は患者様の相談に応じ、砕石術が可能かどうか、治療による痛みや腎皮膜下血腫などの副作用リスクや合併症について説明してくれるでしょう。
ESWL治療(腎結石の破砕)が1980年にヒトに初めて実施されるまで、患者様には外科的手術を受ける以外に選択肢はありませんでした。現在では、毎年世界中で50万人を超える患者様がESWLによる治療を受けています。この治療は適切な結石を粉砕するとてもシンプルな選択です。体外衝撃波砕石術(ESWL)の考案者であるDornier MedTech社はこの分野で30年に及ぶ実績を重ね、現在も世界中で何百という同社のESWL機器が使用されています。